技術で勝って、経営で負ける
「うちのエンジニアは本当に優秀です。技術力なら大手にも負けない自信がある。」
約50名規模のソフトウェア開発会社を率いる私にとって、それは紛れもない本音でした。クライアントからの評価は常に高く、受注は安定していました。
しかし、ある日の経営会議で幹部から投げかけられた質問に、私は答えることができませんでした。
「社長、今動いている複数のプロジェクト、どれが一番利益を出していますか?」
正直に言えば、プロジェクト単位の収支がまったく見えていなかったのです。売上は分かる。でも、エンジニアの工数配分や外注費を加味した正確な利益率となると、誰も把握できていない。「なんとなく忙しいが、なんとなく利益が残らない」──そんな状態が何年も続いていました。
もう一つの課題 ── 成長への投資ができない
事業拡大のために優秀なエンジニアを採用したい。開発環境も刷新したい。しかし、金融機関に融資を相談するにも、説得力のある事業計画書や資金調達計画書を作るノウハウが社内にない。
「技術者集団としてはプロでも、経営や財務に関しては素人同然でした。このままでは成長のチャンスを逃してしまう、という焦りがありました。」
さらに、新規顧客の獲得にも壁がありました。技術力は高いのに、それを伝える営業資料が整っていない。提案書のクオリティも担当者によってバラバラ。技術の良さが、正しくお客様に届いていなかったのです。
支援との出会い
専門家に相談したのは、取引先の紹介がきっかけでした。初回の面談で「まず御社の数字を一緒に見させてください」と言われ、財務データを洗いざらい共有しました。
数日後に提示された分析レポートを見て、衝撃を受けました。利益率が高いと思っていたプロジェクトが実は赤字だったり、小規模ながら高収益な案件が埋もれていたり。自分たちの会社なのに、初めて見る数字がそこにありました。
プロジェクト別の「見える化」
最初に取り組んだのは、管理会計体制の構築です。プロジェクト別の原価計算の仕組みを一から作り上げました。
エンジニアの工数管理と連動した予実管理ダッシュボードを導入し、売上・コスト・利益を月次で正確に把握できるようになりました。このダッシュボードにより、経営判断に必要なデータがリアルタイムで可視化されるようになったのです。
「ダッシュボードを見るのが日課になりました。『このプロジェクトは予定より工数がかかっている』と早い段階で気づけるようになったのは革命的でした。」
月次決算の確定も、従来の15営業日から5営業日にまで短縮。スピーディーな経営判断が可能になりました。
資金調達 ── 数字で語る成長戦略
財務基盤が整ったことで、資金調達への道も開けました。中期の事業計画をベースに資金調達計画書を策定。成長投資の内訳と期待されるリターンを明確化し、金融機関との交渉に臨みました。
融資だけでなく、補助金・助成金の活用も含めた最適な資金調達ミックスを提案いただき、結果として希望額の融資を獲得。開発体制の増強という長年の目標に、ようやく手が届きました。
営業力の底上げ ── 技術を「伝わる言葉」に
並行して取り組んだのが、営業資料の刷新です。自社の技術力と実績を効果的に伝えるための資料を、一から再設計しました。
サービス概要資料、導入事例集、提案テンプレートを体系的に整備。営業チームが一貫性のある提案活動を展開できる基盤が整いました。
その効果は数字に直結しました。新規顧客からの問い合わせ件数が大幅に増加。「御社の資料を見て、ぜひ相談したいと思った」という声をいただくことが増え、技術力がようやく正しく伝わるようになった実感があります。
変革がもたらしたもの
低採算案件の早期発見と対策が可能になったことで、全体の営業利益率は大幅に改善。業務改善施策の実行により、プロジェクトの平均納期も大幅に短縮しました。
しかし、最大の変化は「数字に基づいて経営を語れるようになった」ことです。以前は勘と経験に頼っていた判断が、今ではデータに裏打ちされたものに変わりました。
「財務の可視化と資金調達の両面から支援いただき、経営の視界が一気にクリアになりました。技術力を正しく伝える営業資料も整い、成長への確かな手応えを感じています。」
技術力を持つIT企業は多い。しかし、経営の基盤が整って初めて、その技術力を持続的な成長に結びつけることができる。私たちは今、そのことを実感しています。
※本事例は、当社の支援内容をわかりやすくお伝えするために内容を一部調整しています。